今たたいているパソコンのキーボードは、プラスチック。マウスも当然、プラスチック。デスクスタンドのスイッチもプラスチック。鍋の取っ手もプラスチック。携帯電話もプラスチック。実は毎日プラスチックしか触っていないんじゃないかと思えるくらい、たくさんのものがプラスチックでできている。
造形が自由で、軽くて丈夫で、成分を工夫すれば熱に強くなったり柔らかくなったり、電気を溜めることだってできる。発色もきれい。感触も自在。とにかく便利な素材だと思う。樹脂といえばもともと琥珀や漆といった天然由来の素材を指したが、今では合成樹脂を連想するくらい浸透して、暮らしを支えている。
木のテーブルがある。大木から切り出された、立派な板。どっしりと構えていて、大黒柱じゃないが、家のよりどころとなるような、たくましい存在感を漂わす。そんなテーブルもつやを保つために、扱いを楽にするために、長持ちするように、ほとんどのものがプラスチックのコーディングが施されている。だから触っているのは、大木じゃなくてプラスチック。木の温もりを感じる、なんてことはできない。
素材にはそれぞれ特有の表情があって、心に響いてくる。鉄には鉄の、ガラスにはガラスのかもし出す雰囲気がある。木材にもたくましくてやさしい表情があって、それに包まれたいと多くの人が思う。でもよく目にしている木材のようなものは、印刷だったりする。雰囲気だけなら申し分なく再現されているから、役目は果たしているかもしれない。でもそれは、本質じゃない。
素材の感触。見た目以上に大切な、リアルな刺激を忘れはしないかと、不安になることがある。世の中は、バーチャルじゃない。